これから超高齢社会を生きる私たちにとって、認知症やその介護は他人ごとではありません。
「認知症は予防できるんだ」
「認知症になっても、進行予防に取組みながら、充実した生活を送ることは可能なんだ」
といったように、私たち一人ひとりが認知症を正しく理解するのはとても大切なことです。
このため、認知症予防に取組む個々の団体が、認知症に関する正しい理解の普及に向けた取組みを行っているところではありますが、国民の関心はいまだに低く、今後の展望が開けない状況が続いています。
『全国認知症予防ネットワーク』に、政府や日本医師会からも期待
そこで、『認知症予防の会』代表の私が呼びかけ人となって、認知症予防に関する国内初の全国組織である『全国認知症予防ネットワーク』を設立しました。
『全国認知症予防ネットワーク』は、全国で認知症予防に取組む団体や企業等が加盟し、「予防法の普及」、「予防の質の向上」、「調査・提言」に取り組んでいくことになります。
9月4日に開催された設立総会では、加藤勝信厚生労働大臣から「意義深い取組であり、前へ前へと進めてもらいたい。厚労省としても『全国認知症予防ネットワーク』と連携をしていきたい」、西銘恒三郎経済産業副大臣から「時代に合った素晴らしい取組であり、地元沖縄でも加盟団体を立ち上げたい」、今村聡日本医師会副会長から「日本医師会としても『全国認知症予防ネットワーク』と協力しながら認知症予防の取組を進めていきたい」とのご挨拶があったほか、多くのご来賓から期待のメッセージが寄せられました。
認知症医療の今後
『全国認知症予防ネットワーク』設立総会当日は、『認知症予防サミット』と題したシンポジウムも併せて開催しました。
『認知症予防サミット』では、厚生労働省認知症施策推進室、経済産業省ヘルスケア産業課による講演に加え、九州大学の二宮利治教授、東京都健康長寿医療センターの鈴木宏幸研究員、日本イーライリリーの藤本利夫副社長、認知症予防団体『元気!ながさきの会』の伊藤代表によるパネルディスカッションを行いました。
パネルディスカッションにおいては、認知症の治療に使われる薬について、
・現在使われているのは、病気の進行を抑制したり周辺症状を抑えたりする薬であり、根本治療に結びつくものではない。
・創薬の今後の方向性は、神経の破壊を予防する薬の開発に向かっていく。
といった紹介がありました。
認知症予防の具体策は!?
また、そのような薬が開発されるまでは予防の取組が重要となりますが、具体的な予防法について、
・大豆製品、野菜、海藻、乳製品、果物、魚、卵などを多めに食べる人は認知症発症のリスクが最大約4割低くなる。
・1日に100〜200グラムの牛乳や乳製品を取っている人の認知症発症率は、ほとんど取っていない人と比べて約3割低い。
といったことなどが紹介されました。
一方で、認知症予防がなかなか普及しない根本的な原因に、効果の科学的検証が十分でないことがありますが、この点については、
・効果検証には長い時間がかかるが、国の予算が単年度主義であるため、研究費確保の見通しが立たない。
・実際、大規模コホート研究の予算は大幅に減額され、厳しい状況にある。
といった議論が行われました。
低い国民の関心。打開策は!?
認知症予防についてはメディアでも多く取り上げられていますが、国民の関心はいまだに低いのが実情です。
この状況を打開するため、『全国認知症予防ネットワーク』では、
・シンポジウムを開催し、普及啓発を行う
・加盟メンバー向けの勉強会等を開催し、予防の質の向上を図る
・認知症に対する正しい理解や予防法の普及、国を挙げた認知症対策の充実に向けた提言を行う
などの活動を行っていきます。
そして、認知症の方やその家族が安心して心穏やかに暮らせる社会を目指していきます。