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「人として扱って!」:認知症国会勉強会(第5回)の議論から


国会で認知症対策の議論を活性化すべく今年2月に立ち上げた「認知症国会勉強会」ですが、先日開催した第5回勉強会には、社会参加型デイサービス「DAYS BLG!」代表の前田隆行さんと、認知症当事者で『DAYS BLG!』利用者の吉田さん(仮名)、渡辺さん(仮名)にご参加いただき、意見交換を行いました。

社会参加型デイサービスとは!?

『DAYS BLG!』では、利用者さん自身が1日の過ごし方や何を食べるかを考え、実際に料理をしたり、施設が提携している会社に働きに出たりしています。

仕事の内容はカーディーラーでの洗車やレストランでの下ごしらえなど多様で、僅かですが労働の対価も得ることができます。

利用者の吉田さんは「認知症当事者である私たちでも自立心を持って生きられる環境が、『DAYS BLG!』にはあります」と語ってくれました。

認知症の人はなぜ引きこもるのか?

一般的に、認知症になると自宅に引きこもる方が多いと言われています。

利用者の吉田さんは、実際に引きこもりの生活を送っていた経験から、

「外に出るのが怖かったです。認知症当事者は、世間では自分たちのことを人として扱ってもらえないと思っていますから」

「そうなると、家で死を待つだけの生活です。そんな暮らしが4~5年も絶つと、身も心も朽ちていきます」

「最近は当事者の居場所として『認知症カフェ』が増えてきていますが、実際は認知症“対策”がその場の話題の中心になってしまっており、当事者として居心地のいい場ではありません」

と、引きこもりの背景となる社会課題を指摘してくれました。

“認知症の人の財布は小銭だらけ”には理由がある!?

よく“両親の財布に大量の小銭がたまっていたら認知症に注意”などと言われます。

このことについて、代表の前田さんは「認知症になると、支払いに時間がかかることが多い。後ろに並んでいる人がいると、手間取ると申し訳ないから高額紙幣でパッと払ってしまい、結果として財布に小銭がたまっていくんです」と解説してくれました。

周りにはなかなか理解できない言動も、当事者目線で捉えると、そこにはちゃんと理由があるんだ、という示唆に富む話だと思います。

なお、海外のあるスーパーでは、一部のレジに“ゆっくり支払いたい人専用レーン”を設けたところ、そのお店の売上がなんと1.4倍になったということです。

自立できる環境で人生が変わった!!

『DAYS BLG!』で社会参加の機会を得た吉田さんは「社会と、街と、仲間とつながることができた。素の自分で居られる場所、身構えずにコミュニケーションできる場所が見つかった」と笑顔を見せてくれました。

また前田さんによると、『DAYS BLG!』で社会とつながれたことで、要介護5だったのが要支援1にまで回復し、現在はカラオケボックスの厨房でアルバイトをしながら充実した暮らしを送っている認知症当事者の方もいるそうです。

いま、社会に求められることとは!?

では、認知症当事者の方々が自立して暮らせる環境をつくるために何が必要なのか?

利用者の渡辺さんは「なんと言っても、家を出て社会とつながることが大事。認知症当事者が1人でも安心して外出できる環境がほしいです」と語ってくれました。

また前田さんによると、『DAYS BLG!』がある東京都町田市ではデイサービス中に利用者が外出することを認めているので、今回紹介したような事業を行うことができているものの、自治体によっては外出を認めないところもあり、そういった地域では社会参加型のデイサービスを提供することはできないとのことでした。

質疑応答の時間には神奈川県でデイサービス施設を経営者している方からも「利用者さんを外に連れ出してあげようと思っても、行政の担当者が“危険だから”といって認めてくれない。自治体によって判断が異なる現状はおかしい。全国の行政で統一してもらいたい」といった意見が出ました。

『認知症国会勉強会』を積み重ねてきた中で、認知症当事者の方々がいかに不本意な暮らしを強いられているか、その実態が浮き彫りになりつつあります。

認知症フレンドリーな社会の実現は待ったなしです。

官民挙げて、この課題にスピード感を持って取り組んでいかなければなりません。

(この勉強会に事務局として関わってくれている、栗田さんをはじめ日本医療政策機構のみなさんに感謝申し上げます。)


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