「祖母は小料理屋を営んでいましたが、私たち孫が産まれると、お店をたたんで私たちの面倒をみてくれました」
「祖母が認知症になったのは、生きがいだったお店を手放したことが大きいのかもしれません。私たちにも責任があるのかもしれない、そう思って悩みました」
【シニア起業の魅力とは?】
「銀座セカンドライフ株式会社」を訪問し、片桐社長にお話をうかがいました。
同社では、シニア向けの創業セミナーやレンタルオフィスなど、シニア起業のサポートをしています。
「祖母ができなかった、シニアの方々の『働き続けたい』という希望を応援したいと思ったのです」
元気なシニアが増える中、社会との接点を持ち続けていたい、というニーズは高まっています。
定年退職者を再雇用する企業も増えていますが、大半は現役時代の半分以下の収入になってしまいます。
このような背景を反映してか、起業を考えるシニアが増えています。
実際、中小企業白書によると、年代別で起業家が最も多いのは60歳以上です。
片桐さんは言います。
「自分の経験やアイデアを活かして貢献できるうえ、自分のペースで気兼ねなく仕事ができる、というのが魅力になっているのだと思います」
「最近では、ボランティア活動をやめて起業する、という流れもあります。『ボランティアは善意を押しつけているような感じがする』とおっしゃる方もいました」
しかし、「起業したい」と漠然とした思いを抱いたとしても、具体的なアイデアを考えられない人が多いのが実情です。
「以前、大企業で営業職として勤め上げた方の起業相談で『自分には起業のネタにできるようなスキルが何もない』という悩みをお聞きしたことがあります」
「でも、詳しくお話をうかがっていると、ご自身が営業の仕事をバリバリやられていただけではなく、多くの部下を育ててこられたことがわかりました。私はこの方は営業のプロフェッショナルなのだと思いました。ですので、こうお伝えしたのです」
「これまでの経験を活かして、営業指導の事業を始めるのはいかがですか?」
【シニア起業家の成功確率は高い!?】
その後、その方は片桐さんの助言通り、営業指導の仕事で起業されたそうです。
自分の経験やスキルを客観的に評価するのは意外と難しいものですよね。
迷った時、困った時に、気づきを与えてくれる存在はとても大きいと思います。
逆に、そういった「気でき」さえあれば、誰にでも起業のチャンスはあるのではないか、と感じました。
片桐さんと意見交換をさせていただく中で、国への要望も聞かせていただきました。
「シニア起業家への表彰制度が必要だと思います。表彰された方がロールモデルとなって、起業に興味を持つシニアが増えていけば、社会にとっても良い影響があるのではないでしょうか。若者や女性の起業家に対する表彰はあるのに、シニアにだけ存在しないのは不思議に思います」
「シニア起業家は、『小さく産んで身の丈に育てる』ビジネスモデルを好む傾向にあります。その点、国の創業補助金の下限額は100万円で、これはシニアにとって高いハードルになっています」
どちらも正論だ、と感じました。
シニアの活躍を促進する政策の一つとして、検討していきたいと思います。
ここまで読んでいただいたみなさん、ありがとうございました。
最後に、セカンドライフの充実に向けた片桐さんの言葉を紹介して、この文章を終えたいと思います。
「輝くシニアの方々は、無理せず適度に働く生活を送っている点で共通しています」
「起業と聞くとリスクを感じる方もいるようですが、堅実な経営スタイルを実践する方がほとんどで、実は、シニア起業家の成功率は高いんです」