国会で認知症対策の議論を活性化すべく今年2月に立ち上げた「認知症国会勉強会」ですが、先日開催した第4回勉強会には、アルツハイマー研究の第一人者である東京大学医学部教授の岩坪威先生にご参加いただき、意見交換を行いました。
アルツハイマー病の原因は?
アルツハイマー病は、脳内にアミロイドβやタウと呼ばれる特殊なたんぱく質が溜まり、神経細胞が壊死して減っていく為に、認知機能に障害が起こる疾患です。
岩坪先生によると、アミロイドβは認知症を発症する30年も前から脳内に蓄積し始めているため、超早期からの治療が必要になります。
認知症のクスリで医療費が高騰する!?
このため現在は、かなり早い段階でアミロイドβの蓄積を抑える治療薬「プレクリニカルAD予防薬」の開発が進められています。
しかし、これは「抗体医薬品」という種類のもので、製造するのに莫大なコストがかかります。
仮に実用化された場合、どんなに少なく見積もっても国内で年間数千億円の医療費負担が生じるようです。
将来的には、「低分子医薬品」と言われる、低コストで製造可能な認知症治療薬の出現が期待されます。
それでも認知症のクスリが必要なワケ
一方で、認知症にかかる社会的コストは医療費よりも介護費の方が圧倒的に大きくなっています。
現在、認知症の医療費は2兆円弱であるのに対し、公的介護費は6.4兆円、家族介護費は6.2兆円となっています。
医療費が増えても、認知症の患者が減れば介護費を大きく減らすことになり、結果的に社会的コストを下げることにつながると考えられます。
認知症のクスリはいつ完成するのか!?
現在開発中の「プレクリニカルAD予防薬」。
実は日本でも既に東大病院で治験が行われています。
岩坪先生のお話では、4~5年後には治験の結果が見えてくるそうです。
どんな成果が出てくるのか、待ち遠しいですね。
今回はアルツハイマー型認知症がメインテーマとなりましたが、現在国内では、レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症などの治療法も研究が進められています。
認知症を治せる時代を少しでも早く迎えられるよう、国を挙げて研究開発支援に力を入れていきます。
(この勉強会に事務局として関わってくれている、栗田さんをはじめ日本医療政策機構のみなさんに感謝申し上げます。)