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格差対策の視点から所得税法案の質疑に立ちました



近年、格差が拡大し続けています。

このままいくと、日本の社会に分断すら生じかねません。

このため、格差対策はこれから最も重要な政策の1つに位置付けられます。


2022年2月9日の衆議院財務金融委員会では、所得税法改正の審議が行われました。

質疑者として立つ機会を頂いたので、格差対策の切り口から質疑を致しました。

その内容を整理し、ご紹介させていただきます。


※以下は経営者や投資家の方々にとっては必ずしも耳障りの良い内容ではありませんが、成長戦略については別途の考えがありますので、ご理解ください。

 

今回の所得税法改正案には、賃上げ促進税制が含まれています。


私は以前、仮に最低賃金で働き続けた人がいたとして、その人の生涯の暮らしぶりがどうなるのか、表計算ソフトでシミュレーションしたことがあります。

結果は、フルタイムで働き続けても、なおかつ年金が満額支給されるとしても、老後の生活は破綻する、というものでした。

最低賃金では暮らせない。

だとすれば、最低賃金ギリギリで働いている、主に中小零細企業の方々の賃上げはマストです(ただしタイミングは重要です。コロナ禍で企業体力が落ちている中で強引な賃上げをするのは逆効果です)。


しかし、この度の委員会質疑における政府の説明によると、今回の賃上げ促進税制は、中小企業については給与総額が増加していることが要件になっています。

これはつまり、賃上げをしなくても、人を増やせば税額控除される、ということです。

ここは残念なところですので、中小企業の賃上げを真に促進する税制となるよう、今後の深掘りを期待します。



格差是正に効力を発揮する税制という意味では、金融所得課税の強化も見逃せません。

トマ・ピケティも著書『21世紀の資本』で示しているように、資産運用により得られる富は労働によって得られる富を上回り、格差は再生産されていくからです。


金融所得課税の強化については昨年9月の総裁選の際に当時の岸田候補が主張したことでクローズアップされましたが、その後、ほとんど耳にしなくなりました。

この度の委員会質疑でも政府の検討状況を質しましたが、答弁は言葉を選んだ慎重なものでした。

総裁選中にマーケットが激しく反発したことから様子を見ざるを得ない状況なのだと推察しますが、批判に臆せず骨太の政策を打ち出していくべきだと考えます。

もちろん私も汗をかかせて頂きます。



この記事の冒頭、格差対策が重要であると述べました。

極めて重要な政策であり、重点的に手当てしていかなければなりません。

ただ、問題があります。

それは、ただでさえ国債依存度の高い日本の財政が、コロナ対策で大規模な歳出を重ね、極めて厳しい状況にあることです。

つまり、格差対策のような、社会的公正を実現するために必要な予算の確保すら容易でない実情があります。


その背景の1つに、不健全な税制があります。

主要国の法人税率の推移を時系列で見ると、右肩下がりで低下し続けていることがわかります。

これは、自国に立地する企業が法人税率の低い国に移転してしまうと困るため、各国が法人税の減税合戦を繰り広げてきた結果です。


所得税率も同様。

減税合戦の結果、どの主要国も右肩下がりです。

本来、どの国もこのような不毛な状況を望んでいません。


社会的公正の実現に必要な税財源の確保は我が国にとって極めて重要な国家的課題であり、世界共通の関心事項です。

この点について、最近、大きな動きが見られました。

昨年10月、約140か国が参加する国際会議において、『グローバル・ミニマム課税』、すなわち、法人税の減税合戦に終止符を打つ制度の導入が合意されたのです。

『グローバル・ミニマム課税』とは、軽課税国で低税率の法人税しか納めていない多国籍企業に対し、最低税率(15%)に至るまで他国で課税できる制度です。

この制度創設自体は画期的なもので、極めて高く評価すべきだと考えます。

ただ、課題も残ります。

現在の各国の法人税率を見渡す限り、15%という最低税率の設定は低すぎると言わざるを得ませんし、1000億円以上の売上がある企業しか対象にならないのも網の目が粗すぎます。

こういった部分については、今後、更なる深掘りが必要です。

この点については引き続き訴えていきたいと考えています。


ちなみにこの『グローバル・ミニマム課税』は、あくまで法人税に限った制度です。

一部の高所得者が所得税率の低い国に移住している実態は周知の通りで、このままでは、所得税の世界における減税合戦は止まりません。

社会的公正を実現するための財源確保のため、所得税についても『グローバル・ミニマム課税』類似の制度を創設すべきです。


この度の委員会質疑では、そのような制度に関する検討状況を質しましたが、政府の答弁は「そのような検討は行われていない」というものでした。

“やってないなら始めればいい”が私のモットーです。

これからも、ゼロをイチにする努力をしていきたいと思います。

 

以上が2022年2月9日の衆議院財務金融委員会における質疑内容のまとめです。


格差問題はこれからの社会の大きなテーマです。

皆で知恵を寄せ合い、課題解決に取り組んでいかなければなりません。

格差是正に向け、政治も全力を尽くします。

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