認知症予防学会が実施したアンケートで、「なりたくない病気」の1番に認知症が選ばれたそうです。
「一度なったら治せない」「親しい人への暴言・暴力を伴うケースもある」「本人の意思に反して行動が制限されてしまう」などといった負のイメージが相当影響しているのでしょう。
先日開催した認知症議員連盟では、レビー小体型認知症当事者でジャーナリストの山本朋史さん、『認知症介護研究・研修東京センター』研究部長の永田久美子さんにご参加いただき、認知症の方々が自らの置かれた状況をどう捉えているのか、生の声を聴かせていただきました。
山本さんからは、
レビー小体型認知症の症状の1つに、感覚神経が鈍くなる、というものがある。実際自分も診断当初、ストレッチなどで目いっぱい筋肉を伸ばしても痛みを全く感じなかった。しかし、「筋トレによって脳に刺激を与えると脳細胞と感覚神経をつなげることができる」とのトレーナーの方の言葉通り、トレーニングを継続するうちに痛みを感じられるようになった。筋トレに加え、芸術療法や音楽療法、デュアルタスク、認知ゲーム、料理などいろいろなトレーニングに取り組む中で、体調に大きな変化を感じている。診断を受けてから毎日、ミスの回数をカウントしているが、診断当初は1か月に65回ミスしていたものが、今では5~6回にまで減った。自分以外にも、トレーニングで症状が改善し、仕事に復帰することができた人たちを何人も知っている。
自分は体調の変化に気付いた時、「家族に迷惑をかけたくないし、記者の仕事を長く続けたい」との思いから、すぐに病院に駆け込んだ。しかし一般的には、認知症と診断されるのが怖くて病院に行くのが遅れてしまう人が多い。また、診断された後、自身が認知症であることを会社に伝えていない人も多い。自分が通っているデイサービスには現役で仕事をしている人が何人もいるが、会社に認知症のことを伝えている人は1人もいない。
認知症はトレーニングによって予防や進行の抑制が可能だし、認知症になってからも充実した生活を送ることはできる。こういった認知症に対する正しい理解が普及すれば、早期発見・早期治療につなげることもできるのではないか。
といったご意見をいただきました。
永田さんからは、
偏見や誤解などもあり、認知症の方々が社会に出て自分らしく生きることを周囲が抑制するケースも少なくない。実際、「認知症の診断を受けたとたんに、家族から“危ないから一人で出ちゃダメ”と言われて悶々としている。診断前は、一人で銀行や買い物に行ったり仲間と飲みに行っていたのに」「まだまだやりたいことがあるし、いろんな力があるのに、役所に訴えても“家族と来てください”と言われ、相手にしてもらえない」といった声が聞かれる。
認知症施策立案の際、当事者の意見を聴く機会を設けている市区町村はわずか2.8%。認知症の方々の声はまだまだ社会に届いていない。
「認知症の人を支援する」という発想から「認知症の人が自然体で活動し、社会とつながれる環境づくり」への発想の転換が必要。そこには家族の理解も不可欠で、診断直後に医師から家族に一声かけてもらうと効果大。
といったご意見をいただきました。
認知症に対する正しい理解を普及し、認知症の方々の尊厳がしっかりと尊重される社会にしていくこと、そして予防や早期発見・早期治療につなげていくことは極めて重要です。
お忙しい中ご協力いただいた山本さん、永田さんには改めて心から感謝申し上げます。
引き続き、法案策定の準備のため、各分野の専門家の方々との意見交換を精力的に行っていきます。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
読んでいただいた方にとって少しでも参考になればとても嬉しいです。
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