認知症基本法の再検討に向けて⑥



認知症議員連盟を開催しました。

今回は、社会参加型デイサービス『DAYS BLG!』を運営する前田隆行さんをお招きし、認知症共生社会の在り方について意見交換をさせていただきました。


前田さんからは、

  • 『DAYS BLG!』では、利用者さん自身が1日の過ごし方や何を食べるかを考え、実際に料理をしたり、施設が提携している会社に働きに出たりしている。仕事の内容はカーディーラーでの洗車やレストランでの下ごしらえなど多様で、僅かだが労働の対価も得ることができる。利用者さんからは「社会と、街と、仲間とつながることができた。素の自分で居られる場所、身構えずにコミュニケーションできる場所が見つかった」「認知症当事者である私たちでも自立心を持って生きられるようになった」と言われている。『DAYS BLG!』で社会とつながれたことで、要介護5だったのが要支援1にまで回復し、現在はカラオケボックスの厨房でアルバイトをしながら充実した暮らしを送っている認知症当事者の方もいる。協力してくれる企業の存在は大きい。

  • 認知症になり、引きこもり生活を送っていたことがある利用者さんは「外に出るのが怖かった。認知症当事者は、世間では自分たちのことを人として扱ってもらえないと思っている。そうなると、家で死を待つだけの生活。そんな暮らしが4~5年も絶つと、身も心も朽ちていく。最近は当事者の居場所として『認知症カフェ』が増えてきているが、実際は認知症“対策”がその場の話題の中心になってしまっており、当事者として居心地のいい場ではない」と、引きこもりの背景となる課題を指摘している。

  • よく「両親の財布に大量の小銭がたまっていたら認知症に注意」などと言われる。認知症になると、支払いに時間がかかることが多い。後ろに並んでいる人がいると、手間取ると申し訳ないから高額紙幣でパッと払ってしまい、結果として財布に小銭がたまっていく。周りにはなかなか理解できない言動も、当事者目線で捉えると、そこにはちゃんと理由がある。海外のあるスーパーでは、一部のレジに“ゆっくり支払いたい人専用レーン”を設けたところ、そのお店の売上がなんと1.4倍になった。最近は国内でも生協などがこのような取組を導入している。

  • 認知症当事者の方々が自立して暮らせる環境をつくる必要がある。ある利用者さんは「家を出て社会とつながることが一番大事だと思う。認知症当事者が1人でも安心して外出できる環境がほしい」と語っていた。

  • 『DAYS BLG!』の利用者さん達は要介護認定を受けていても、お仕事中はとても元気に働いている。ある利用者さんは、毎月1~2回程度は行方不明になって防災無線による捜索の常連になっているが、そんな話をあっけらかんと話しながら楽しそうに暮している。しかし一般的には、アパートの部屋を間違えたりゴミ出しの曜日を間違えたりといったことが積み重なると、行政によって「自立した生活は困難」と判断され、施設や病院に送られることになる。本当はまだまだ街で暮らす力があるのにもったいない。

  • 『DAYS BLG!』では駄菓子屋をやっている。そうするとそこに子供達がやってくる。やがて利用者さん達と子供達が顔見知りになっていく。利用者さん達にとっては、自分の事を知ってくれている子供達が地域にいるから、外に出るのが怖くなくなる。これまでに、利用者さんが迷子になった時に、子供達が駄菓子屋まで送り届けてくれたことが2回あった。

  • 『DAYS BLG!』がある東京都町田市ではデイサービス中に利用者が外出することを認めているので、社会参加型の事業を行うことができているものの、自治体によっては外出を認めないところもあり、そういった地域では同様のサービスを提供することはできない。

  • 若年性認知症は現役世代であることから、介護保険法の介護予防の理念よりも、障害者総合支援法の自立の理念に親和性がある。しかし、障害者総合支援法は見当識障害が想定されていないため、就労意欲・能力があるにもかかわらず、移動支援が利用できず、就労を断念せざるを得ないという制度の弊害が起きている。

  • 若年性認知症支援は、軽度から重度への進行とともに利用可能な支援制度が変わっていくが、本人・家族介護者は、軽度の段階から症状の進行に応じた連続性のある支援を望んでいて、それを可能にするのは、認知症パスのような情報ではなく、本人・家族介護者の状況・症状の進行をよく理解した支援者による伴走型の支援の仕組みである。現状の都道府県単位の若年性認知症支援コーディネーターの配置は、人員的にも地理的にも機能しづらい。せめて、市区町村単位の配置が必要。

  • 中高年の精神障害の子供を養育する親が認知症になるなど、多問題家族は少なくない。福祉的な支援は、分野ごとの支援の仕組みから家族単位・世帯単位の支援の仕組みに転換する必要がある。また、支援の必要に対して既存の制度を柔軟に活用できる仕組みである「パーソン・センタード」へ転換するべきである。加えて、障害福祉サービスは相談支援専門員、介護保険サービスは介護支援専門員、といった縦割りを排し、ケアマネジメントの一元化を図るべきである。

などのお話を伺いました。


こういった視点は、今後、認知症対策の方向性を定めていく上で欠かすことのできないものです。

お忙しい中ご協力いただいた前田さんには改めて心から感謝申し上げます。

引き続き、法案策定の準備のため、各分野の専門家の方々との意見交換を精力的に行っていきます。


長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

読んでいただいた方にとって少しでも参考になればとても嬉しいです。

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