top of page

台湾訪問と有事研究

台湾有事について、中国の習近平氏は昨年秋の共産党大会において「武力による台湾統一も選択肢」と発言しました。

発言には常に慎重を期する中国首脳がここまではっきり明言している時点で、台湾有事は「あるか無いか」ではなく「いつあるか」の問題だと考えざるを得ません。


あまり知られていませんが、中国は尖閣のみならず沖縄全体の領有権まで主張しています。

台湾から沖縄西端の先島諸島までの距離はわずか100kmあまり。先島諸島から見ると沖縄本島よりも台湾の方が近い。

台湾有事或いは台湾統一において沖縄が影響を受けないシナリオは考えにくいです。


加えて、海上交通の要衝である台湾海峡を通る日本籍船は6分に1隻もあると言われ、台湾有事が我が国の物流に与える影響も極めて大きいものがあります。


そこで私はこの度、台湾を訪問し、外務大臣や国会議長はじめ政治家の方々、国軍当局関係者との意見交換を行うとともに、中国本土に極めて近い場所にある金門島(台湾領土の有人離島)を訪問し、有事研究を行ってきました。


台湾政府は、対中戦争を防ぐため、抑止力向上に全力を挙げていますが、その上で、有事を見越した備えにも既に着手しています。

徴兵年齢の引き下げや兵役期間の長期化に加え、有事の食糧・エネルギー・医薬品・通信等のライフライン維持に関する取組など、備えの幅は広範にわたります。

それだけ事態が緊迫しているということです。


かような状況を反映するように、現在、台湾の民進党政権と中国政府は没交渉の状態にあります。

そこで一役買っているのが、今回私が訪問した金門島です。

金門島は、中国本土の厦門までわずか2㎞。台湾本島からの方が遥かに遠い、特異なロケーションにあります。実際、海辺に立って対岸の中国を見ると、本当にすぐ目の前に厦門の街が見渡せます。

このため、金門島は、ライフラインや経済の大部分を中国に頼っています。

中国との関わりの深さは、習近平氏が最近、金門県政府(金門島の自治体)に対して「厦門との間に橋を通そう」と甘い言葉をささやいて来ていることからも推し量ることができます。

そして、中国政府と近い関係にある金門県政府が、没交渉状態にある台湾政府と中国政府の間に入ってメッセンジャーの役割を果たしているのです。


この金門島の位置付けは、もしかしたらロシアとウクライナにおけるクリミア半島にあたるのかもしれません。

中国からすると、すぐ手の届く距離にある金門島を手にするのは物理的には困難な話ではないかもしれない。場合によっては武力すら不要かもしれない。

そして、大きなダメージを受けずに金門島を奪取できてしまえば、次には台湾本島が視野に入るでしょう。ロシアがクリミアを経てウクライナに侵攻したように。


そのような事態を防ぐためにも、金門島の経済や生活インフラの中国からの自立を進め、金門島に暮らす人々が心情的にこれ以上中国に近寄ってしまうのを防ぐ必要があります。

既に中国に依存した暮らしを送っている金門島の人々は、少なからず、台湾本島との距離を感じていますから。


かように巧妙な中国のハイブリッド戦は、金門島に限らず、台湾本島にも及んでいます。

2022年に行われた台湾の地方選挙において、民進党は国民党に大敗を喫しました。

極めて中国寄りのスタンスを取り、一部メンバーが中国との統一すら主張している国民党がなぜこの状況下で選挙に勝てたのか。

それは、国民党が掲げる「中国政府に近い国民党が政権を取れば中国は攻めてこない。民進党は戦争をもたらし、国民党は平和をもたらす」というスローガンが台湾の国民の心を掴んだからだと考えられます。

その国民党を、水面下で中国政府が支援しているのは想像するまでもありませんが、来年の台湾総統選挙に向けて、中国による情報戦は更に激しさを増していくことでしょう。

そして、何より怖いのは、巧妙な情報戦・認知戦を通して台湾人の民主主義への信頼が削がれていき、最終的に「中国と組んだ方がいいのではないか」という世論がマジョリティーを占めてしまう事態です。


そうならないためにも、我が国は最大限の努力で台湾を支えていく必要があります。

政治的には、他の国々とも連携しつつ、力による現状変更に断固反対し、台湾海峡の平和と安定にコミットする姿勢を示し続けること。そして我が国も含めた抑止力向上を図ること。

経済的には、台湾のTPP加入を支援し、実現すること。TPPに加入すれば、台湾の中国への経済的依存を軽減することができます。経済的依存度が高い状況下で中国が経済的威圧策を発動した場合、台湾が被るダメージは甚大です。これはハイブリッド戦の観点からも極めて重要な課題です。当然ながら、我が国のサプライチェーン再構築も不可欠です。


中国が覇権主義を剝き出しにし、アメリカの存在感が相対的に低下する中で、我が国が黙っていても平和を享受できた時代は過去のものになってしまいました。

我が国にとって大切な友人である台湾を支えることが、我々自身を守ることにつながる。

日本の平和を守るため、私たち日本人の平穏な暮らしを守るため、身を挺して臨む覚悟です。



閲覧数:433回

Comments


bottom of page